# 女性議員と出生率 -関東1都3県の市区町村データを用いた分析- ②

データ、分析手法

使用したデータは説明変数、被説明変数のいずれも2015年から2019年の5年間のデータである。1都3県の市区町村数は211あるが、説明変数、被説明変数のいずれかに欠損値があった12の市区町村を除いた199の市町村を対象にした(東京都23区は全て別々に扱い一つ一つの区5年分を集計した一方でさいたま市横浜市は一つの市として今回は扱った)。今回取り除いたのは千葉県長生村御宿町芝山町、埼玉県羽生市東秩父村、東京都利島村新島村神津島村御蔵島村小笠原村、神奈川県清川村の12の市区町村である。

説明変数は199の自治体にそれぞれ5年分なので995のデータがある。次の図は今回の分析で使用したデータの一部である。

被説明変数である出生率合計特殊出生率)は各都県が公開している各市区町村の(東京都は東京都福祉保健局「人口動態統計」、千葉県は「人口動態統計」、埼玉県は彩の国統計情報館から、神奈川県は「衛星統計年報」)データを使用した。これは各市町村の出生率を掲載している厚生労働省が公開している「人口動態調査」は平成29年度までしかないこと、政府統計の総合窓口であるe-Stat上では都道府県ごと、または政令指定都市、中核都市を含めたデータまでしか掲載されていなかったためである。記述統計を確認すると2015年から2019年にかけて平均出生率が小さくなっていったことがわかる。 説明変数の地方議会を占める女性議員の割合は内閣府男女共同参画局「市区町村女性参画状況見えるかマップ」にて公開されている。2015年から2020年までの6年間の全ての都道府県市区町村の女性議員の割合を入手することができる。そこで最も古い2015年から2019年までの5年間分を使用した。マップとあるように地図の上にカーソルを合わせるとその自治体の女性議員がわかるサイトで、残念ながらサイトの出典にある総務省が公表している資料を確認するも各自治体の議員はわからなかったため、サイトにあるデータを一つずつ打ち込んで収集した。記述統計を確認すると5年平均は21%と5年間で大きく変動はないことがわかる。また2015年から2019年にかけて平均が上がっていることも読み取れる。 もう一つの説明変数である婚姻数も同じく各都道府県の人口動態統計から市町村ごとに2015年から2019年分を抽出した。記述統計を見てみると5年間を通して平均、標準偏差最小値、最大値に大きな変動はみられない。平均が979、最小値が2、最大値が199634となっており、結婚数は地区町村の人口比などに左右されていることがわかる。標準偏差は5年平均で18600になっている。標準偏差にばらつきが多いので対数をとることにする。

今回は5年間分のデータを用いてパネルデータ分析を行なった。その際に以下のようなモデルを想定して、分析を行なった。

 \displaystyle F = ma

 

各変数の示すものは

TFR  p市のおける合計特殊出生率(Total Ferity Rate, TFR)

FP   地方議会における女性議員の割合

NOM 結婚している女性の人数

θ    観察不可能な固定効果

ε    誤差項

である。

 

今回、固定効果モデルを使ったのは、浅井・神林・山口(2016)にならい自治体ごとにある伝統など自然条件の違いなど観測できないもの(データに現れないもの)の影響をθが吸収するからである。

この研究では固定効果を含まないOLS推定も行い、比較する。仮説としてFPが+になるとTFRも+になると予想する。